2018年02月20日
志村けんのコントではない。日本語のお話。
「そうどす」「そうだす」の「どす」「だす」はテレビドラマなどで聞いているし、関西の方言であることは知っていた。しかしどっちがどっちとか大阪だとか京都だとか、そういう認識はまったくなかった。
ところが、NHKの朝ドラ「わろてんか」で、京都生まれの主人公てんが「どす」を使っていたら、「だす」の大阪人に揶揄されるシーンがあって、「そうなんだ」と思った次第。
(舞妓さん)
調べたら、大阪の「だす」は「で・やす」、京都の「どす」は「で・おす」が縮まったもの。「やす」も「おす」も現代語でいう「(・・で)ある」の丁寧語のようなものらしい。
標準語では「です」である。「です」も「で」+「そうろう(候う)」、「ございます」、「あります」などのような言葉が短くなったものという(どれかははっきりしていない、全部かもしれない)。
どれも近世(戦国時代から江戸時代ごろ)にできたものとのこと。その前はなんと言っていたのだろうか。
私は仕事柄(英語・日本語翻訳業)、言語には興味があって、いろいろな言葉を勉強したこともある。翻訳していると英語以外の外国語も出てくることがあり、ヨーロッパ言語などちょっとでも文法を知っていると役立つ。だからヨーロッパ各国語の辞書も持っていた。ドイツ語、イタリア語は値の張る本格的な辞書を揃えた。今ではほとんどオンラインで外国語が調べられるので楽ではあるが、紙の辞書で育った私にはちょっと寂しい。
言語関係の本もけっこう読んだ。
言語学においては、言葉というものは、どんどん短く省略されていくものらしいが、つまりは過去に遡れば言語はもっと複雑だったということ。古代ローマ人が使ったラテン語や、古代インド人が使ったサンスクリット語なども、「最初は複雑な文法構造があったが、次第に簡略化されていった」そうだ。
日本語も「です、ます」は極端にいえば「で○○○○」「ま○○○○」が「です」「ます」と簡略・省略されたもの。まあなんと大胆な変化。
この簡略・省略というのは、なんだかとてもおもしろい。
「わろてんか」でも、「おおきに」をよく使う。Thank you. の意味だとは知っていたが、「おおきに、ありがとうございます」という場面がよくあって、「それって、リダンダント(redundant = 表現が余計、冗漫な)じゃないか」と思っていた。
(大阪城)
でも「おおきに」は「とても、たいへんに very」の意味だったんだ。「Thank you very much.」が「おおきに、ありがとうございます」だった。
そういえばちょっと前の朝ドラでも「だんだん」というのがあった。「だんだん」は出雲地方の方言(その他西日本ではあちこちで使われているらしい)。「Thank you.」だが、江戸時代に生まれた言葉で「重ね重ね」の意味。これも「おおきに」と同じ、本来は「very much」の意味。
日本語はおもしろいね。「まくらことば」が独り立ちしてしまう。
「こんにちは」だって「Today」であって、そのあとに「ご機嫌いかが」とか「よいおひよりで」とか言うつもりだったのが、最初だけで終わってしまった。
「さようなら」も同じ。挨拶やお話が終わったようなので、「さようならば(直訳は、If it is so かな)」と言って「おいとまします」とか「ごきげんよう」とか言っていたのが、後半が省略されてしまった。英語でいえば「Well, then, good-bye.」という感じか。
その現代版が「じゃーね」だが、「じゃ、また」なんていうのは、直訳すれば「Well, again」であって、お別れの言葉そのものを使わないでお別れとするなんて、なんとまあ「本質を言わずにわからせる」日本人らしい。
お礼や挨拶の「どーも」は、なんだろう。「どうも、むずかしいらしい」とか「どうも、うまくいかない」とか、それが「どうも、ありがとう」に使われるようになったのは、どうしてだろう。さらに「こんにちは」の意味でも使われている。
日本語はおかしな言葉だ。
「どす、だす、です」は、「です」が標準語になっているが、実際には「江戸弁」だったはず。首都が江戸に移らなければ、標準語は「どす」か「だす」だったかもしれない。
関西の人たちは悔しいだろうな。私は甲斐の生まれなので東(あずま)言葉ではあるが、「標準語」でもないので、どちらでもいいんだけど。
しかし、移住者が多い軽井沢は別として、小諸とか佐久とか、私の聞く限りだが、「なまり」がほとんどない。「甲斐」はけっこう方言があるし(「づら」「じゃん」など)、イントネーションも特徴があるのに、甲斐よりもっと奥(失礼!)にある佐久地方になまりがないのはどうしてだろう。不思議だ。
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posted by ロンド at 16:23|
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言語
2018年02月01日
軽井沢のお隣さんである佐久市は、意外に素晴らしいまちだった、なんていうと佐久の住民に怒られるかもしれない。
4年前追分に越してきて、一番よく行くのは佐久(佐久平中心)。この辺りでは一番の大都市(人口ほぼ10万)だから、いろいろと商業施設が多い。追分からは20分くらいで行けるので、何かと言えば佐久平だ。
「佐久は日本三大ケーキのまちの一つ」というのを知って驚いたのはつい最近。誰が言ったかわからないけれど、Google で「日本三大ケーキのまち」と入れると、佐久が出てくる。佐久市の気候がケーキの本場、フランスの気候に近く、素材となる果実、乳製品、卵などの生産地に近いからというのがその理由だそうだ。
優れた素材がそばにある、というのは、作り手の意欲を高め、おいしいケーキを作りたいという人々を呼び込むようだ(「信州佐久ケーキ職人の会」というグループもある)。三大のあとの二つはというと、聞けば誰でも納得する「自由が丘(東京)」と「神戸」。この二つに佐久が並ぶのだからすごい。
広い意味で佐久地域に入る(軽井沢は北佐久郡)我が追分の家のそばにも美味しいケーキ屋さん「プティ・ラパン」がある。軽井沢の18号線沿いにある「ピータース」は、秋になると、和栗のモンブランを買いに行く。モンブランが苦手で食べられなかった妻が、初めておいしいと思った多摩センター(多摩市)にあるケーキ屋さんのモンブランに似ているからだ。この「ピータース」は佐久発だ(本店は佐久の中込)。
さあ、佐久がすごいのは「ケーキ」だけではない。
佐久は「医療や福祉が整っている」まちでもある。
そもそも長野県は日本有数の長寿県であるが、佐久市はさらに長寿である。一例を挙げると、男性の平均寿命で言えば、長野県が79.4歳、佐久市は79.9歳、全国平均は78.8歳。地域の病院や医療施設も健康管理活動にいそしみ、市民の健康意識も高い。一人当たりの医療費が低い(全国平均が28.7万円、長野県が26.4万円に対し佐久市は24.9万円)ということは、健康な人が多いということ(統計データは佐久大学HPより)。
みずみずしい野菜や果物、おいしいケーキ、健康に良い冷涼な気候、晴れの日が多い好天、北に浅間山、西に日本アルプス、南に八ヶ岳を望む絶景のまち、とくれば長生きにもなろう。
(佐久パラダから望む八ヶ岳)
さらに佐久地域といえば、「映像芸術」だ。
なんと「北斗の拳」原作者の武論尊氏が、奨学金資金として出身地の佐久市に4億円(!)を寄付し、今年になって「武論尊100時間漫画塾」の開講を発表。4月開講の同塾では、第一線で活躍するマンガ家を含めた豪華講師陣が登壇。何よりもうれしいのが、もうすぐ佐久市と東京を結ぶ路線などのバスに「北斗の拳」キャラクターが描かれることなんだ。これはもう「アチャ・チャ・チャ・チャ」だ。
そして佐久市のお隣小海町(南佐久郡)出身の映像アーティストといえば、新海誠氏。大ヒットアニメ映画「君の名は。」の聖地は小海町とのこと。小海町の自然を元にした風景が同映画にもあちこち登場している。
彼らに続く佐久地域出身の映像芸術家が登場することを願いたい。創造性を育てられる佐久ならばそれができるだろう。
ちなみに「佐久(さく)」の語源だが、一つの説が「にいさく」(新たに裂いた=開いた=開拓した土地)。そしてかつて佐久総社でもあった由緒ある「新海三社神社」(にいさく=新開=新海)が佐久市田口に鎮座している。新海監督は、ここから「新海」の名を取ったとも言われている。
(新海三社神社の三重塔。室町時代建立の重要文化財)
最後に、佐久市の「ぴんころ地蔵」を紹介。佐久市の野沢(佐久平駅から車で南下すること約15分)にある。成田山薬師寺の参道にあって、「ぴんぴん長生きして、逝くときはころっと逝けるように」との願いを込めて比較的最近建てられたお地蔵さん。我が家もよく初詣やお参りに行く。佐久の元気の象徴か。
(かわいらしいぴんころ地蔵さん。リュウも長寿を祈願した。)
この野沢という地区は、旧佐久甲州街道の宿場で、江戸時代から栄えていた街。参道では毎月第二土曜日に市が出て、けっこうな賑わい。そこにいるだけで昔に戻ったような風情がある。古い建物が残る周辺の路地は、散策しても心休まる。車の往来も少なく、犬の散歩もゆっくりできる。お薦めスポットである。
(参道での餅つき)
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posted by ロンド at 17:39|
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郷土
プロフィール
ブログネームは、ロンド。フリーの翻訳者(日英)。自宅にてiMac を駆って仕事。 2013年に東京の多摩ニュータウンから軽井沢の追分に移住。 同居人は、妻とトイプードルのリュウ。 リュウは、運動不足のロンドを散歩に連れ出すことで、健康管理に貢献。 御影用水温水路の風景に惹かれて、「軽井沢に住むなら追分」となった。
