2018年03月27日

新浅間山ハザードマップの衝撃


ニュース等でご存知の通り、浅間山火山防災協議会が3月23日に大規模噴火を想定した新たなハザードマップを公表しました(自治体毎のハザードマップの発行には、作成に時間がかかるようです)。

天仁噴火(1108)の規模を対象にしているとのこと。火砕流や火砕サージで軽井沢、御代田、小諸、佐久が大被害。群馬県の長野原のほうがさらに被害は大きい。衝撃的です。

天仁噴火規模の噴火は「1000年に一度」(産経ニュース)という文句もニュースタイトルでは出ていました。

私は火山に関して何の教育もないただの素人ですが、個人的にも興味があるし、翻訳の専門分野が土木、砂防、災害なので、それなりに文献を読んでいます。ですからちょっと言わせてください。

現行の「浅間山火山防災マップ」の「噴火警戒レベル」では、4と5になると「天明規模の噴火」が予想される、とあり、「浅間山融雪型火山泥流マップ」では、噴火警戒レベル4と5では「天仁天明クラスの噴火」が予想される、とあります。後者では1958年の噴火規模における「融雪型火山泥流」のシミュレーション図が掲載され、泥流で被害を受けると予想される場所が具体的にわかるようになっています。

lava_flow.jpeg
(抜粋。噴火が雪が積もっている冬に起きたら、という最悪のパターンを想定したもの。つまり噴火の熱で雪が溶け、洪水が起きる、ということ)

私もこれを見て、今の場所を選んでいます(つまり川からは離れている場所)。

新しい浅間山ハザードマップでは天仁噴火規模の噴火を予想し、溶岩流や降灰の予想被害範囲を記しているとのこと(大規模噴火バージョンとしてのようです)。

一町民として知りたいのは、天仁噴火の想定において、どう対処すべきか、です。その場合「引っ越す」ことしかありません。何しろ我が家は軽井沢の大地に刻まれた12世紀の面影に書いたように、天仁噴火の追分火砕流の上に建っているのですから。その名残が追分キャベツです。

浅間山噴火被害の「想定」において今、専門家たちが「天仁噴火」のシミュレーションを浅間山ハザードマップに載せる理由は何なのでしょうか。

(1) 将来の可能性として最悪と考えられる噴火被害の状況を市民に知らせる。
(2) 実際に起こる可能性がある災害として、市民に準備してもらう。
(3) 可能性としてはあるので、今警告しておけば、実際起きた時に「なぜ知らせてくれなかったのか」とは非難されない。

公式的には(1)でしょう。歴史としては知っていた12世紀の天仁噴火が、もし今起きたらどんな災害が出るのか、明確に示すわけです(降灰量など)。現実味があるので「そんなにひどかったのか」ということがわかるのだと思います。噴火災害の怖さを理解してもらうためには、有効でしょう。

しかし気持ちとしては、御嶽山や草津白根山の突破的水蒸気噴火があったので、浅間山も事前に警告しておけば、予測できなくても不作為を非難されることはない、という(3)もあると思います。専門家と言っても、相手は自然。科学は万能ではないのですから。

具体的にどうしろ、という意味の(2)だったら、被害想定地域の人は早速引っ越すしかありません。大規模噴火は事前にわかるので、逃げる余裕はあると思いますけれど。実際に天仁規模の噴火が起きたら、佐久地方は壊滅です。軽井沢のリゾートも消えるでしょう(噴出する方向によっては、火砕流で埋まるのですから)。

さて、現実的に言えば、確率はとても低いと思います。専門家に聞いても「可能性はありますが、今その徴候はありません」という答えになるでしょう。

しかし、ニュースのタイトルで使われるような「1000年に一度の噴火(の確率)」のような表現は誤解を与えます。地震と違って、噴火は特定の周期で起きるわけではないからです。

専門家も本当に周期的に噴火しているような火山をのぞき、一般的に「過去の事例からいえば、千年に一度はそういう噴火が起きている、と言える」のような言い方をするはずです。それは平均すると、であり、周期的に起きる、ではないのです。

天仁噴火は800年ほど前で、「1000年に一度」と言えないことはありませんが、天明噴火は200年ほど前です。天仁から天明は約700年。どうしても「周期」が気になるのであれば、次はあと400〜500年ほど先でしょう。実際に天明噴火で大量のマグマが噴出されたので、今の浅間山にそれほどマグマは溜まっていないはずです。

そもそもマグマがなければ、噴火は起きません。

それに火山は「死ぬ」ことだってあります。八ヶ岳はかつて全山が活火山。甲府盆地を火砕流で埋めたのですが、今は一つの岳だけが活火山と指定されているだけ(それも、えっ火山だったの?と思うくらいですが)。浅間山だって離山はもうちょっとで大噴火するところだったけれど、「火山ドーム」で終わってしまい、大地をあそこまで盛り上げたマグマはもう地下にはありません。

浅間山は21世紀になって何度か小噴火を起こしています。20世紀はもうちょっと規模の大きい噴火が頻発していました。昭和時代には死者も出ています(1947)。

それから比べると、今はとても静かです。比べものにならないくらい、静か。

観測体制も整っておりデータの蓄積も豊富。だから、このところ火山性地震や火山性微動が非常に増えているにもかかわらず(3年前のプチ噴火に近い程度の活発度だった!)、マグマの動きに大きな異常がないので、専門家はあまり慌てていないようです。

これからどんどん活発化して、遠い将来、本当に天仁や天明級の噴火が起こるかもしれませんが、逆にどんどん沈静化してしまうことだってあります。

IMG_1755.jpg
(ボクはいつも浅間山のツマだけど、怖くなんかないよ)

でも自然相手ですから、どうなるかわかりませんが、そのときはご容赦くださいね。まあでも私自身は生きて浅間山のマグマが山腹を流れ下るのを見るとは思いません、たとえ100歳まで生きたとしても。


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posted by ロンド at 17:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 浅間山

2018年03月12日

言葉の響きが世界を広げる


聞いただけで「これは悪人だ」と思わせる響きを持つ名前がある。たいていはフィクションではあるが。
 
例えば、「ハリー・ポッター」の仇敵「ヴォルデモート」。なんとも不気味な響きではないか。作者のJ・K・ローリングによるとフランス語で、vol de mort = flight of death(死の飛翔)とのこと。
 
しかし言葉の意味とは別に、作者はまず最初に気味悪い音に聞こえる名前を考えついたのだろう。mort はフランス語で「死」を意味する言葉であり、英語においても mort という音は暗いイメージがある。morgue (死体置き場)を連想させる。vol も、volcano(火山)や violence(暴力)など荒々しさを連想させるはずだ。
 
同様に、魔法学校ホグワーツの寮の名前、「スリザリン」も不気味だ。「s l」の音は英語であまり感じの良い音ではない。slave(奴隷) とか slaughter(屠殺) とか sly(あくどい)とか、ネガティブな意味の単語がある。
 
悪役で不気味な音を持つ有名人といえば、「スターウォーズ」の「ダース・ベーダー (Darth Vader)」。dark invader のような暗い怖いイメージがある。それを狙って作った名前であることは間違いない。
 
読者はこういう名前を聞いて、理由はわからないが(考えないが)聞いてすぐ「英雄」「悪役」「不気味」などのイメージを抱くのだ。フィクション、特にSFやファンタジーの楽しみ方は、こういうところにもある。
 
フィクションではなく、実際の名前も、その響きによって別世界を想像させるものがある。
 
私にとって、その一つが、「ギンヌンガガップ」。

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(宇宙のどこか)

何か想像もつかないような響き。恐ろしいような謎に満ちているような永劫に続くような。「ガ」行の濁音が多いことも、そういうイメージを生み出す要因の一つだろう。
 
確か、SF小説に出てきた言葉だと思う。大宇宙のどこかにある途方もない裂け目。そんな意味で使われたのかも知れない。実際は、北欧神話に出てくる「この世の中が生まれる前に存在した巨大な裂け目」のことらしい。ギリシャ神話では「カオス」に相当するとのこと。
 
「ギンヌンガガップ」の綴りは、Ginnungagap。もともと古代北欧語で、語源は Ginnunga が「始まり」とか「不思議な」とか諸説ある。gap は現代英語でも同じ gap で「裂け目」。
 
もう一つ、聞いただけで別世界が広がる言葉は、「アコンカグア」。

aconcagua2.jpg
(アコンカグア)

これは南米アンデス山脈の最高峰。標高7000メートル近い高さがある。最初にどこで聞いたか覚えていないが、アニメかもしれない。船(戦艦?宇宙船?)の名前で使われたような気がする。実際にはそれが山の名前だとは知らなかったが、聞いただけで、原初的で、雄大な雰囲気があった。
 
「カグア」が「かぐや姫」の「かぐや」と音が似ていることもあるのかもしれない。女性、しかも卑弥呼のような首長的な女性のイメージがある。女性的で優しい響きがある「ア」の音が多いせいもある。
 
これらの単語は聞いただけで、「センス・オブ・ワンダー」(不思議な感覚)を感じさせてくれる。これは、SF小説でよく使われる言葉。SFらしさが感じられる作品は、「センス・オブ・ワンダー」があるという。
 
「センス・オブ・ワンダー」を感じられる作品には、小説ではフランク・ハーバート作の「デューン砂の惑星」、映画ではリドリー・スコット監督の「ブレードランナー」がある。
 
「ギンヌンガガップ」と「アコンカグア」は私にとっては、単語だけで「センス・オブ・ワンダー」を感じさせる、鮮烈な言葉である。
 
さて最後に、日本の「言葉」を挙げないわけにはいかない。
 
個人的に「センス・オブ・ワンダー」を感じる日本の言葉は、日本神話の中心にいる太陽神「アマテラス」である。

sun.jpg
(太陽)

「アマ(天)」「テラス(照らす)」もおそらく二千年も前から使われていた日本語であろう。古代の息吹がいまだもって感じられる単語だ。「ア」の音も多く、個々の言葉の意味が持つイメージも相まって、大きく抱擁してくれるような崇高さを醸し出している。
 
「アマテラス」は魏志倭人伝で紹介された「倭」の「女王」である「卑弥呼」が神格化されたものであろう。「卑弥呼」は「ひみこ」と読まれているが、実際には「日御子(ひのみこ)」か「姫御子(みめみこ)」だったのだろう、と言われている。
 
「アマテラス」の音を聞いただけで、神話上でも歴史上でも日本史に燦然と輝くヒロインの太陽に向かって祈る姿が浮かんでくる。それほど強烈なイメージを持つ名前であり、音である。


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posted by ロンド at 16:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 言語
プロフィール
ブログネームは、ロンド。 2013年に東京の多摩ニュータウンから軽井沢の追分に移住。今年還暦に。 同居人は、妻とトイプードルのリュウ。 ロンドは、フリーの翻訳者(日英)。自宅にてiMac を駆って仕事。 リュウ(13歳)は、運動不足のロンドを散歩に連れ出すことで、健康管理に貢献。 御影用水温水路の風景に惹かれて、「軽井沢に住むなら追分」となった。