2017年07月16日

信玄餅の謎


今年の5月、御代田町にある「茶房ひとひら」で食べた和菓子セット、冷たくてのどにツルリと入るおいしい水菓子だった。マダムは今「水信玄餅」にはまっている、と言っていた。
 
「水信玄餅」って何だ。我が故郷山梨の銘菓「信玄餅」は知っているが、水信玄餅は聞いたことがない。

Hitohira.jpg
(茶房ひとひらの和菓子セット)
 
水菓子は中軽井沢の和菓子店「和」でも、売っていた。注文を受けてから型から出すという繊細な菓子、店内でしか食べられない。テラスがあるので、我が家のワンコと一緒に食べることができた。美味しい暑気払いになった。

Shizuku.jpg
(和菓子屋「和」の「白糸のしずく」)
 
両者とも、寒天、きなこ、黒蜜の組合せ。シンプルだが柔らかいプルッとした食感と冷たさが魅力。
 
でも「水信玄餅」とは何だろう、と「ひとひら」マダムから聞いた名前が気になっていた。
 
私の知っている「信玄餅」は以下の「桔梗信玄餅」である。

Shingenmochi_Dish.jpg
(普通は、包みを開けて、容器のまま食べるが、皿に出しても雰囲気が良い。)

ShingenmochiShelf.jpg
(長野に入っても、高速のSAで売っている。)
 
特別歴史があるわけでも、伝統のお菓子というわけでもないが、包装と食べ方がユニークなお菓子。
 
私が生まれる前からあったお菓子ではない。調べてみると、昭和43年(1968)に販売が開始されている。甲府にいたときはよく食べていた。人気も高く、菓子関連の賞もたくさんとっている。全国的にも名前が知られるようになり、社会人になってから会社の同僚たちへの土産はたいてい「ぶどう」と「信玄餅」だった。
 
会社勤めをやめてからは、いつしか信玄餅は食べる機会がなくなっていたが、最近、冠婚葬祭で甲府に帰省した折り、久々に食べてみるとやっぱりおいしい。繊細な味とか洗練された味とか、そういうものではないが、単純においしい。時々食べたいと思う。
 
『山梨県には古来よりお盆の時期に、餅にきな粉と黒蜜をかけた安倍川餅を供えて食べる習慣がある。これをヒントに現代風に小さくまとめ、お盆だけでなく一年中食べられるものにしたのが、「桔梗信玄餅」。』
 
と桔梗屋のホームページ「桔梗屋をもっと楽しむ」に記されている。
 
「安倍川もち」は、その昔、安倍川岸の茶屋で休んでいた徳川家康に店主が当時安倍川上流で産出した金をヒントに「金粉に似たきな粉をまぶした餅」を献上、その美味さに感動した家康が「安倍川もち」と命名した、とのこと。当時は画期的なお菓子だったのだ。
 
時を超えて、ありそうでなかった「信玄餅」を最初に考案した人はすごい!
 
だが、桔梗屋には「水信玄餅」なるものはなかった。これは一体どういうことか。
 
で実家に聞いたり親戚に聞いたり、Google したりして調べたら驚いた。山梨の「信玄餅」は二つあったのだ。
 
上記に載せた写真の「信玄餅」を考案して売り出したのは明治22年創業の老舗菓子店「桔梗屋」(本社は笛吹市)。しかし、「信玄餅」という商標を所有しているのは、明治35年創業のやはり老舗菓子店「金精軒」(きんせいけん)(山梨県北杜市)。
 
最初に「信玄餅」の餅菓子を考案したのは桔梗屋であることは確からしい。だが、当時金精軒は「信玄最中」というお菓子を作っており商標権も持っていた。
 
そのせいかどうかわからないが、桔梗屋は「信玄餅」の商品名が使えず、「桔梗信玄餅」で商標登録した。その後、金精軒がまったく同じ餅菓子を売り出し、「信玄餅」で商標登録した。
 
金精軒は、信玄餅誕生の由来を「信玄餅も公(武田信玄)が出陣の際、非常食糧として欠かせなかった切り餅にちなんで調味致したものです」と同店のHPにて説明している。
 
この桔梗屋の「桔梗信玄餅」と金精軒の「信玄餅」については、こちらのブログで詳しく解説している。
 
金精軒の信玄餅は食べたことがなかったので、取り寄せてみた。正直、まったく同じ。味もそれほど変わりがない。どちらかといえば桔梗信玄餅のほうが、個人的には好きかな、という感じ。

Kinsei2.jpg
(袋も同じコンセプト)
Kinsei1.jpg
Kinsei3.jpg
(包装も中身も同じ)

商業的には、桔梗信玄餅に軍配が上がることは間違いない。個人的にはつい一ヶ月前まで金精軒の信玄餅など存在も知らなかったし、見たこともなかった。桔梗屋の信玄餅は東京でも長野でも買える。全国的にも知られているのは「桔梗信玄餅」だし、「信玄餅」という餅菓子の本家は桔梗屋であろう。
 
ただ、冒頭の「ひとひら」マダムの言っていた「水信玄餅」とは、金精軒の商品だった。HPには「水信玄餅は運搬やお日保ちといった一般的に考慮されるべき販売条件を一切無視して作られております。」とあり、店内で食べることのみが販売の条件の夏限定菓子となっている。

今いろんなところで目にするこのプルプル水菓子の「本家」は金精軒なのだろうか。なぜかといえば、こんな記事を見つけたからだ。
 
「水信玄餅が全米を震撼? 「レインドロップ・ケーキ」の登場に日本の本家は…」
 
アメリカでも真似された日本の和菓子。今は「真似」とは言わず「インスパイア」と言うようだが・・・・。
 
ちなみに、桔梗屋も金精軒も、信玄餅以外にも多くの独創的でおいしそうな菓子を創作・販売している人気の和菓子店である。山梨のお菓子業界も、全国的に、いや世界的に負けてはいない(かな)。


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posted by ロンド at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | おいしいもの
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プロフィール
ブログネームは、ロンド。フリーの翻訳者(日英)。自宅にてiMac を駆って仕事。 2013年に東京の多摩ニュータウンから軽井沢の追分に移住。 同居人は、妻とトイプードルのリュウ。 リュウは、運動不足のロンドを散歩に連れ出すことで、健康管理に貢献。 御影用水温水路の風景に惹かれて、「軽井沢に住むなら追分」となった。