軽井沢はサマーリゾート。文化的な別荘地。自然あふれる保養地。そんな「おしゃれな高原観光地」といったイメージが一般的だろう。
軽井沢に移住して3年、最近思うこと、私にとっての軽井沢は「ちょうどよい町」であることだ。

(ペット連れも多い旧軽銀座)
例えば気候。軽井沢は標高約千メートルの高原リゾートだから夏は涼しい、冬は寒い。
最近軽井沢の夏も暑くなってきたと言われているが、観光スポットは木のないところが多いから、気温30度を超えると日射も強いため、暑いと思われるのだろう。だが、多くの住人は森の中に住む。外気温30度超でも一歩森の中に入れば、ヒヤッとして涼しい。それに朝夕はぐっと気温も下がる。「ちょうどよい夏」である。
冬は寒い。最近雪も増えてきたと言われているが、日本にはもっと雪深いところはたくさんある。同じ積雪寒冷地である東北や北海道と違うのは、軽井沢の好天である。特に西側の追分となると晴天が多い。日中零下でも日が出ていると、体もポカポカ、心はうきうき。おまけに家はもとより寒冷地仕様で冬も暖かく薪ストーブは心も体も温める。結果的に、「ちょうどよい冬」なのだ。

(雪道の散歩。お天気なので暖かい。)
人口わずか2万。ところがその人口でまかなえる以上に食に関わる店が多い。フレンチ、イタリアン、中華、おそば屋さん、パン屋さん。これらの味を支えているのは、飽食・贅沢とかそういう意識でなく、軽井沢を避暑地として開発した宣教師たちの正直さ、素直さの伝統を受け継ぐ「食のまじめさ」だと思う。「おいしいものを作って食べてもらう」という意識を持った人たちが集まりお店を出す。そしてその営業を支えているのは観光客。そしてありがたいことに軽井沢定住者はわざわざ大都会に行かなくても、懐具合との相談で、ときどきおいしいものが地元で味わえる。

(手頃な値段でおいしいパンやイタリアンが楽しめる旧軽ロータリそばの「沢村」)
さらに軽井沢周辺は野菜の産地。長野は青森に次ぐりんごの産地だ。ブドウも桃もある。新鮮でおいしい野菜や果物がいつも食べられる。都市生活に戻りたい妻を引き留めているのは、大好物の信州りんごだ。

(皮のまま食べられる種なしの「ナガノパープル」は十年ほどまえに登場した新しいブドウ)
だから、食についても「ちょうどよい」。
私は森の中の住民なので、実は時々「人混み」が恋しくなる。そんな私にとって日本有数の観光地である軽井沢は「人混み」を求めるには「ちょうどよい」。渋谷とか新宿とかそんな究極の混み具合ではない、「ちょうどよい」人混みなのだ。
それに空気はきれいで街並みも清潔だ。おまけにペット可のお店も多く、犬にやさしい。さらに満員電車など乗らなくても、ハイシーズンでなければ20分車を走らせれば旧軽銀座や軽井沢プリンスショッピングプラザに着ける。

(プリンスのフードコート)
中軽井沢のハルニレテラスもお気に入りスポットの一つ。東京の代官山みたいな(ほとんど行ったことはないのでわからないがイメージとして)瀟洒た店構え。でも森の中。レストランはどこもテラス席がありペットと一緒に食べられる。湯川の渓流沿いの散歩もできる。温泉もある。適度に都会性が楽しめる。大都会のハイソさ一流ぽさにはあまり縁がなかった私にとって、ハルニレテラスは都会的な雰囲気と森の雰囲気がこじんまりした空間のなかで同時に味わえる「ちょうどよい」スポットなのだ。


(ハルニレテラスのテラス席) (脇を流れる湯川の渓流)
昨今増えている自然災害。実は軽井沢は天災についてはかなり安全だと思っている。
国や各自治体のシミュレーション結果などとしてすでに公表済みだが、いつ来てもおかしくないと言われているプレート型大地震やフォッサマグナの直下型地震が来ても、佐久や小諸を含めた軽井沢周辺はせいぜい最大震度5強くらい。軽井沢周辺そのものに活断層がないから直下地震もない。
震度5強であれば、旧耐震の建物(1981年以前に建てられたもの)でも壊れない(旧耐震の建物は震度6強で半壊以上となる)。

(浅間山)
でも軽井沢には浅間山という活火山があるだろうって。
確かに18世紀の天明噴火は甚大な被害を及ぼした。しかし、頻繁に小噴火を繰り返した20世紀初頭からの活発期と比べても、今はとても静かなのだ。それが突然大噴火を起こすはずはない。
長い災害の歴史を持つ浅間山は観測態勢も充実していて、マグマの位置や動きもわかる。私は素人だが、地震と違って火山はマグマがあってこそ噴火するのだから、現在の状態から言ってこの数十年の間に大きな噴火はないと思っている。
結論から言えば、軽井沢は、地震や噴火に対する安心感についても、「ちょうどよい」と言えると思う。
最後に、「仕事」について。
主要産業である観光産業や農業と並んで、地元の働き手は「自営業」というか「手に職」を持った人たちも多い。
なにしろ家を建てるのに、最初にすることが高さ20メートルを超す木々の伐採・抜根という森林の町である。大工さんを始めとした土木建築業の職人さん、ノコギリ、カンナ、電動工具などを駆使し建具を作ったり薪棚を作ったり家を作ったり、バックホー、クレーン、ミキサー車などを操り地面を掘り整地し庭を整備したり道を作ったりする。こうした職業は、器用さ、繊細さ、忍耐力、心配りだけが必要なのでなく、多分に物理的、数学的な知識と感覚を必要とするのだ。
庭作りで依頼した職人さんのバックホーを操る姿はカッコよかった。職人さんの休憩中に、庭に置かれたバックホーにこっそり乗ってみた。心が躍った。動かしてみたかった。同じ「手に職」でも指しか使わない翻訳業の私からすれば、なんとも奇跡的な創造職である。

(初めてのバックホー!)
ちなみにご近所にも、パソコンを使って自宅で仕事をしている人たちが多い。仕事の親近感においても「ちょうどよい」のだ。
そんなわけで、3年目の定住者である私にとって、軽井沢は生きている充実感という意味において「ちょうどよい」町なのである。
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私も文がうまければ同じこと書きたいです。
ちょうどよい、ほどよい、場合によってものすごくよい、と言いたいところはありますね。
全てに同感故、
軽井沢を表現するときに一部使わせて頂きたいです。
もちろんロンドさんはこう言ってました的な表現にはしますが。
お互い軽井沢ライフ楽しみましょう。