2018年01月08日
「そばと言えば信州」そう思っていた。でも生産量日本一は北海道。長野は2016年収穫量では茨城、山形に次いで四番目(5位の福井を含め、2位から5位まで生産量にあまり違いはない)である。
軽井沢に越してきて、よく食べるようになった食材はもちろんそば(ついでジャム)。おいしいそば屋さんがあちこちにあるのでよく行くようになり、自宅でも毎日食べるようになった。
まず毎朝食べるのが、そば粉入りヨーグルトいろいろミックス。最初にそば粉をそばがき風に熱湯で溶いて、オーツ、ヨーグルト、きな粉、抹茶、黒ごま、ミルク、青汁、最後にジャムを入れ混ぜて、我が家の朝食ができあがり。
(熱湯をそば粉にかけて「そばがき」)
そば粉を入れるようになったのは、こちらに来てから。「そば粉に熱湯を注いでかき混ぜる」ので、いわゆる「椀がき」に相当する。最初はヨーグルトにそば粉をそのまま混ぜていたのだが、そば粉は、そのまま食べることを想定していないそうなので、念のため「椀がき」にすることにした。
そういえば、真田信繁の時代は「そばがき」が主な食べ方だった。NHK大河ドラマ「真田丸」でも、真田信之が九度山に配流された昌幸と信繁にそばを送るシーンがあり、そこでは「そばがき」の食べ方しかなかったことが描かれている。
麺としてのそばの作り方が考案され、それが普及したのは江戸時代になってからのこと。外国にも麺風のそばはあるものの、日本の麺としての「そば」(「そばぎり」)は日本独特の製法らしい。外国人観光客にとっても「蕎打ち体験」は人気で、軽井沢の外国人向けツアーコースにも「蕎打ち体験」が組み込まれていると聞いている。
(軽井沢ガイド協会の研修にて、小諸の中棚荘で行われた蕎打ち体験。この旅館では外国人観光客に英語で蕎打ちを説明しているとのこと。)
外国料理としてのそばで私たちがよく食べるのは「ガレット」。フランスのそば粉入りクレープと言った感じの料理で、美味しいガレット店は軽井沢にもある。我が家でもときどき食べに行く。これがおいしい。
(長倉にある「カシェット」のガレット)
本場のガレットも店や地域によって具やソースなど様々な種類があるそうだ。
最近人気なのは、そば粉ではなく「そばの実」。健康に良い栄養素がたくさん含まれているとのこと。
例えば、疲労回復効果のあるビタミンB1、良質なタンパク質、必須アミノ酸であるリジン、ダイエット効果のある「レジスタントプロテイン」(分解されにくい食物繊維的働きを持つタンパク質)、さらに血管を強化し高血圧を防ぐ「ルチン」などが含まれていて、それらがまるまる摂れるということで、近年人気が上昇している。
ルチンは「そば湯」から大量に摂れるので、そば湯は必ずいただくことにしている。ルチン豊富な「そば湯」を飲む習慣は、信州で生まれたそうだ。
我が家では毎食後のお茶に「そば茶」を混ぜて飲んでいるので、私たちの血管は丈夫である(と期待する)。
時々そば粉を買いに行く小諸市の大西製粉で聞いてみたら、日本中から「そばの実」の注文が来ているとのこと。そこでそばの実を買ってみることにした。
(大西製粉で売っている様々なそば商品)
早速、大西製粉のホームページでも紹介されている「ロシアの家庭料理そばの実カーシャ」を作ってみた。基本のカーシャはけっこう調理が簡単。
(そばの実を洗ってから、空煎りし、塩と水を加えて、水がなくなるまで加熱する)
(最後にバターを絡めて、できあがり。ヨーグルトとハチミツを混ぜてもよい)
お味は・・・うーん、塩味もバター味も薄くて、無味に近い。ロシア人にとってはご飯みたいなものなのだろう。お米のご飯も、それだけで食べるわけではなく、おかずと一緒に食べる。そばの実カーシャも、いろいろな調理法があるようだ。
今度は、炒めた挽肉、玉葱、ニンニクを混ぜた「炒飯風カーシャ」を作ってみよう。
ロシアはなんと世界一のそば生産量・消費量を誇る、そば大国だった。知らなかった。
ちなみに、すでに縄文晩期には日本に来ていた「そば」は、もともと「そばむぎ」と言っていたそうで、「そば」とは「角張った」という意味。「角張った実の麦」が本来の意味。「そばむぎ」の「むぎ」が省略されて「そば」と言うようになったとのこと。
英語では buckwheat だが、語源は「ブナ+小麦」。「ブナの実(角張っている)」のような「麦」という意味で、偶然にも命名法は日本と同じ。
(確かに角張っている実)
中国南部が原産と言われるそばは、痩せた土地でも成長し、救荒食物としても昔から重宝されている。これで栄養満点、健康によい、ダイエットによい、となれば、食べない手はない。
ワンコと一緒に室内で食べられるそば屋さんは軽井沢でもなかなかないので(テラスで食べられる店はいくつかある)、冬はそば屋さんのそばからは遠ざかるが、自宅ではそばを摂らない日はない、という我が家。長野に越してきてよかったことの一つが「そばのある暮らし」である。
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おいしいもの
2017年10月17日
ベジタリアンと言えば、「菜食主義者」。その程度にしか理解していませんでした。
このごろよく聞くあらたなカタカナ英語、「ヴィーガン」。軽井沢にも「ヴィーガン料理店」が最近オープンしています。
(軽井沢バイバス、塩沢交差点そばの森の中にたたずむ古民家が、ヴィーガン料理店の「緑友食堂」。テラスもあってペットと一緒に食べられる。)
ベジタリアンやヴィーガンの音だけ聞いていると、なんかもうエイリアンみたいです。
「菜食主義者」とは、「肉類は健康に良くないので食べない」のかと思ったら、違いました。「動物虐待反対」なんですね。深い意味があったのですが、もちろん日本で生まれた考えではありません。日本人はもともとベジタリアン的な食生活をしていましたから。
肉食が主食で、家畜を大量に処理する西洋だからこそ、こういう考え方が生まれたのでしょう。でも健康上の理由も大きいと思います。肉ばっかり食べていたんじゃ、確かに体に悪いですから。
ベジタリアンも驚くほど種類があります。かつて購読していた Time 誌にベジタリアンの特集があって、何タイプものベジタリアンが説明されていました。例えば以下のような種類です。
(1) Vegetarian (ベジタリアン):これが基本で、動物、鳥類、魚介類の肉を食べない。動物性のものは食べないということ。
(2) Lacto-ovo vegetarian (ラクト・オボ・ベジタリアン):ラクトはミルク、オボは卵。つまり乳製品や卵も食べない、菜食主義。これはそれぞれ「ラクト・ベジタリアン」と「オボ・ベジタリアン」に分かれます。前者が「乳製品は摂らないが卵類は摂るベジタリアン」で後者が「卵類は摂らないが乳製品は摂るベジタリアン」です。
(3) Pescatarian (ペスカタリアン):pesca- は「魚」を意味し、肉類は摂らないが魚だけは食べること。どちらかというと健康上の理由でペスカタリアンになる場合が多いようです。
(4) Vegan (ヴィーガン):これは、乳製品も卵も、動物類から派生した製品も一切摂らないベジタリアン。完全菜食主義です。
(5) Flexitarian (フレクシタリアン):何かジョークみたいですが、時々ベジタリアンになる人のことを、こう言うようです。フレキシブルなベジタリアンということでしょう。これはどちらかといえば日本人ですよね。
Times 誌では、(4)はあったかなあ、よく覚えていません。(5)は確かにありませんでした。新しい言葉でしょう。
明治以前の日本人はほとんどペスカタリアンでしたが、肉を食べなかった理由は、宗教的な考え方からだと理解しています。神道の「穢れ(けがれ)」を嫌う考え方です。肉を食べるというのは、動物の命を奪うことですから、それを嫌ったわけです。「穢れ思想」が定着する前から、具体的には稲作が始まってから以降、基本的に日本人は菜食だったと思います。
例外もあります。マタギなど、縄文人の血を濃く残していると言われている人々や狩猟採集の習慣を維持していた人々は、今で言う「ジビエ(狩猟肉)」で生活していました。侍とか兵士のような職業の人々は、やはり体力上の理由で時には肉も食べていたようです。
ちなみに、「菜食主義的」な日本人が長生き、というのは、日本食だけが理由ではないそうです。例えば今は違いますがかつての沖縄は長寿の島だった。その理由は「豚肉」をよく食べていたから、と聞いたことがあります。日本人の寿命が延びたのは、近年の「健康的な日本食+適度な肉食」ゆえとのこと。やはり動物性食品なしでは、完全な健康体にはなれないのでしょうか。
ところでご存知かと思いますが、現在長野県は男女とも日本一の長寿県です。おいしい新鮮野菜をたっぷり食べられるからでしょう。
現代の大量肉生産状況から考えると、動物虐待反対のヴィーガンになるのも理解できます。大量の肉を摂取しなければならなかった欧米では、「愛護意識」が強く働いたのでしょう。日本では、それほど肉食ではないので、そういう意識もあまり働かなかった(ただし供養はしている)。
しかしよく考えると、多くの生物は、他の生物を摂取して生きてきたわけで、人間もそうやって生きてきました。それが生きるということでしたから。そのおかげで知能が発達し、「おもいやり」のような感情が発達し、他の生き物の命を奪うことを躊躇するようになった。
一部の団体が日本のイルカやクジラ漁を批判しています。イルカやクジラは知的生物という理由ですが、ブタもけっこう知的で、犬以上だそうです。であるならば、家畜屠殺にも反対してくださいね。
いろいろな考え方がありますが、いずれにしても生命体が知的になって、高度な知性を得てくると、生きるのがむずかしくなる、ということです。完全な解決法は、さらなる科学の進歩しかないですね。
(1) 動物性食料を、完全合成する(クローン技術とかバイオ技術とか駆使し、人工的手段にて動物の肉と同じものを作る)。
(2) 植物由来の食糧を改良し、人体が必要とする動物性要素を補完する。
(3) 動物性食料を摂らなくてもよい肉体に改造する。
なんだかSFの世界です。
軽井沢のヴィーガンレストラン「緑友食堂」は今年の春開店。「肉のようで肉でない」ハンバーグはタカキビで、白身魚のフライはヤマイモとヒエをもとに作られています。食感や味は肉みたい。海老のフライ風に仕立てられたのはニンジン。彩りがきれいでした。日本はこういう「肉の代替品」は昔から作ってきました。がんもどきがそうです。最近では「豆腐ハンバーグ」もあります。
(「緑友食堂」の「雑こくプレート」)
(「高きびハンバーグ」)
こういう技術は日本人が得意とするものなのかもしれません。ベジタリアン時代も日本の料理技術は活躍することでしょう。
(追分宿そばのガーデニング専門店「フラワーフィールドガーデンズ」に併設されているヴィーガン料理店「RKガーデン」のランチ)
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おいしいもの
2017年07月16日
今年の5月、御代田町にある「茶房ひとひら」で食べた和菓子セット、冷たくてのどにツルリと入るおいしい水菓子だった。マダムは今「水信玄餅」にはまっている、と言っていた。
「水信玄餅」って何だ。我が故郷山梨の銘菓「信玄餅」は知っているが、水信玄餅は聞いたことがない。
(茶房ひとひらの和菓子セット)
水菓子は中軽井沢の和菓子店「和」でも、売っていた。注文を受けてから型から出すという繊細な菓子、店内でしか食べられない。テラスがあるので、我が家のワンコと一緒に食べることができた。美味しい暑気払いになった。
(和菓子屋「和」の「白糸のしずく」)
両者とも、寒天、きなこ、黒蜜の組合せ。シンプルだが柔らかいプルッとした食感と冷たさが魅力。
でも「水信玄餅」とは何だろう、と「ひとひら」マダムから聞いた名前が気になっていた。
私の知っている「信玄餅」は以下の「桔梗信玄餅」である。
(普通は、包みを開けて、容器のまま食べるが、皿に出しても雰囲気が良い。)
(長野に入っても、高速のSAで売っている。)
特別歴史があるわけでも、伝統のお菓子というわけでもないが、包装と食べ方がユニークなお菓子。
私が生まれる前からあったお菓子ではない。調べてみると、昭和43年(1968)に販売が開始されている。甲府にいたときはよく食べていた。人気も高く、菓子関連の賞もたくさんとっている。全国的にも名前が知られるようになり、社会人になってから会社の同僚たちへの土産はたいてい「ぶどう」と「信玄餅」だった。
会社勤めをやめてからは、いつしか信玄餅は食べる機会がなくなっていたが、最近、冠婚葬祭で甲府に帰省した折り、久々に食べてみるとやっぱりおいしい。繊細な味とか洗練された味とか、そういうものではないが、単純においしい。時々食べたいと思う。
『山梨県には古来よりお盆の時期に、餅にきな粉と黒蜜をかけた安倍川餅を供えて食べる習慣がある。これをヒントに現代風に小さくまとめ、お盆だけでなく一年中食べられるものにしたのが、「桔梗信玄餅」。』
と桔梗屋のホームページ「桔梗屋をもっと楽しむ」に記されている。
「安倍川もち」は、その昔、安倍川岸の茶屋で休んでいた徳川家康に店主が当時安倍川上流で産出した金をヒントに「金粉に似たきな粉をまぶした餅」を献上、その美味さに感動した家康が「安倍川もち」と命名した、とのこと。当時は画期的なお菓子だったのだ。
時を超えて、ありそうでなかった「信玄餅」を最初に考案した人はすごい!
だが、桔梗屋には「水信玄餅」なるものはなかった。これは一体どういうことか。
で実家に聞いたり親戚に聞いたり、Google したりして調べたら驚いた。山梨の「信玄餅」は二つあったのだ。
上記に載せた写真の「信玄餅」を考案して売り出したのは明治22年創業の老舗菓子店「桔梗屋」(本社は笛吹市)。しかし、「信玄餅」という商標を所有しているのは、明治35年創業のやはり老舗菓子店「金精軒」(きんせいけん)(山梨県北杜市)。
最初に「信玄餅」の餅菓子を考案したのは桔梗屋であることは確からしい。だが、当時金精軒は「信玄最中」というお菓子を作っており商標権も持っていた。
そのせいかどうかわからないが、桔梗屋は「信玄餅」の商品名が使えず、「桔梗信玄餅」で商標登録した。その後、金精軒がまったく同じ餅菓子を売り出し、「信玄餅」で商標登録した。
金精軒は、信玄餅誕生の由来を「信玄餅も公(武田信玄)が出陣の際、非常食糧として欠かせなかった切り餅にちなんで調味致したものです」と同店のHPにて説明している。
この桔梗屋の「桔梗信玄餅」と金精軒の「信玄餅」については、こちらのブログで詳しく解説している。
金精軒の信玄餅は食べたことがなかったので、取り寄せてみた。正直、まったく同じ。味もそれほど変わりがない。どちらかといえば桔梗信玄餅のほうが、個人的には好きかな、という感じ。
(袋も同じコンセプト)
(包装も中身も同じ)
商業的には、桔梗信玄餅に軍配が上がることは間違いない。個人的にはつい一ヶ月前まで金精軒の信玄餅など存在も知らなかったし、見たこともなかった。桔梗屋の信玄餅は東京でも長野でも買える。全国的にも知られているのは「桔梗信玄餅」だし、「信玄餅」という餅菓子の本家は桔梗屋であろう。
ただ、冒頭の「ひとひら」マダムの言っていた「水信玄餅」とは、金精軒の商品だった。HPには「水信玄餅は運搬やお日保ちといった一般的に考慮されるべき販売条件を一切無視して作られております。」とあり、店内で食べることのみが販売の条件の夏限定菓子となっている。
今いろんなところで目にするこのプルプル水菓子の「本家」は金精軒なのだろうか。なぜかといえば、こんな記事を見つけたからだ。
「水信玄餅が全米を震撼? 「レインドロップ・ケーキ」の登場に日本の本家は…」
アメリカでも真似された日本の和菓子。今は「真似」とは言わず「インスパイア」と言うようだが・・・・。
ちなみに、桔梗屋も金精軒も、信玄餅以外にも多くの独創的でおいしそうな菓子を創作・販売している人気の和菓子店である。山梨のお菓子業界も、全国的に、いや世界的に負けてはいない(かな)。
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おいしいもの
プロフィール
ブログネームは、ロンド。フリーの翻訳者(日英)。自宅にてiMac を駆って仕事。 2013年に東京の多摩ニュータウンから軽井沢の追分に移住。 同居人は、妻とトイプードルのリュウ。 リュウは、運動不足のロンドを散歩に連れ出すことで、健康管理に貢献。 御影用水温水路の風景に惹かれて、「軽井沢に住むなら追分」となった。
